冊子を作りたいけど、どうやって印刷用のPDFを作ればいいのかわからない。WordやCanvaで作ったデータを印刷に使いたいなど、そんなお悩みを解決するために、正しいPDFデータの作り方を解説します。
個人制作や小部数冊子を自作する人にもわかりやすく、具体例とチェックリスト付きでお届けします。
印刷入稿用のPDFには、画面表示用PDFとは異なる要件があります。以下のチェック項目が満たされていることが重要です。
チェック項目 | 内容 |
---|---|
カラーモード | RGBではなくCMYK推奨 |
フォント | 埋め込み or アウトライン化 |
画像解像度 | 300dpi以上推奨 |
塗り足し | 各辺3mm(背景が端まである場合) |
ソフト別PDF作成の手順と注意点
Word・PowerPointでのPDF作成
塗り足しは手動で対応
WordやPowerPointには塗り足し機能がありませんので、ページサイズを少し大きめに設定し、デザインを端まで配置することで代用が可能です。A4であれば210㎜×297㎜を216㎜×303㎜に設定するなど。
リスクの少ないフォントの条件
フォントに関するトラブル(文字化け・置き換え・再現不可など)を防ぐためにも、フォントの選定は非常に重要です。
安全なフォントを使用するよう意識することが大切です。
フォントの選定
条件 | 理由 |
---|---|
埋め込み可能、またはアウトライン化できる | フォントデータが正確に渡るため、文字化けリスク軽減 |
商用利用が明確にOKなもの | フリーでもライセンスが不明瞭なものはNG |
印刷業界で実績があるもの | 多くの会社が対応しているので互換性が高い |
OS標準フォント(Windows/Mac) | 他環境でも文字の崩れや置き換えが起きにくい |
冊子印刷向きフォント一覧
Windows・Mac共通で比較的安全なフォント一覧となります。
フォント名 | 種類 | コメント |
---|---|---|
游ゴシック / 游明朝 | ゴシック / 明朝 | OS標準。 可読性が高く、デザインにも対応。 |
ヒラギノ角ゴ / 明朝 | ゴシック / 明朝 | macOS標準。 印刷物でも実績が多く、美しい。 |
メイリオ(Meiryo) | ゴシック | 画面・印刷両用。 やや丸みあり、読みやすい。 |
MS ゴシック / MS 明朝 | ゴシック / 明朝 | 古いが広く互換性あり。 可読性はやや劣る。 |
Noto Sans / Noto Serif JP | ゴシック / 明朝 | Google提供のWebフォント。 印刷でも使用可。 |
注意すべきフォント
フォント名 | 理由 |
---|---|
フリーフォント全般 | 埋め込み不可・ライセンス不明・印刷非対応のリスクあり。 |
Adobe Fonts(旧Typekit) | 埋め込みできないことがある。アウトライン必須。 |
特殊書体(手書き風・筆文字など) | 可読性・埋め込み・印刷品質に問題が出ることがある。 |
フォントの埋め込みには注意
名前を付けて保存→PDF選択時に、オプションからフォントを埋め込む設定を有効にしてから保存してください。
特殊フォントは環境違いが原因で文字が置き換わる可能性がありますので、一般的なフォントを使用することを推奨。
最終的なおすすめの運用方法
- 使用フォントは3種類以内に抑える(見出し・本文・強調)
- データ納品前に「フォントの埋め込み」または「アウトライン化」
- PDFで入稿する場合は、「PDF/X-1a」で保存(推奨設定)
- フォント名を印刷会社に事前共有することも安心に繋がります
CanvaでのPDF作成
トンボと塗り足しの設定をONに
CanvaPro版では「トリムマークと塗り足し」をONにできる。CanvaのPDFはRGBが基本なので、色目の変化には注意が必要。
画像解像度は「高品質」を選ぶ
印刷に適した画質(300dpi)で書き出さないと、ぼやけた印刷になりますので、ダウンロード時に「PDF(印刷)」を選択。
解像度は自動的に高めにされますが、元画像が低解像度(72dpi)だと意味がありませんので、使用する画像は、なるべく300dpi以上の素材を用意。
フォント埋め込み
Canvaは基本的にフォントは自動でPDFに埋め込みますが、無料版で使える一部フォントでは埋め込みが制限されていることがありますので、書き出したPDFをAcrobat Readerなどで開き、 「ファイル → プロパティ → フォント」で埋め込まれているかを事前に確認。
PDFのカラーモードはRGB(CMYKには非対応)
CanvaはCMYKでの編集、出力ができず、色味がくすむ・異なる印象になるリスクがあります。
印刷時に色味が多少変わることを事前に把握しておく必要がある。
フォントサイズ・行間も確認を
CanvaはWeb表示に最適化されており、フォントサイズが小さすぎる、行間が詰まりすぎているケースがありますので、最低でも9pt以上の文字サイズを推奨。行間は詰まりすぎないように、1.2〜1.5倍程度が読みやすいです。
InDesignでのPDF作成
最も印刷向きのソフト
塗り足し、CMYK、フォント管理など全てに対応しています。PDF/X-1a(2001)形式で書き出せば、印刷トラブルはほぼ回避が可能。
出力時の設定
- 書き出し形式:PDF/X-1a:2001
- 塗り足し:上下左右3mm
- フォント:埋め込み or アウトライン
データ完成前の最終チェックリスト(印刷直前に確認)
PDF出力後に開いて確認すべき点
- 仕上がりサイズよりも3㎜大きくし、デザインが端まで届いているか(塗り足し)
- 文字化けが起きていないか(フォント)
- 色が極端に変わっていないか(CMYK変換済み?)
- ページ数やサイズに間違いがないか
よくある失敗とその対策
RGBのまま入稿 → 色がくすんだ
PDF作成時にCMYKに変換。
画像がぼやける
元画像の解像度が72dpi(Web用)になっていないかを確認。
300dpi以上の画像を使用すること
テキストがずれる
テキストボックスがページ内で収まりきっていない、改行位置が異なるなど。
PDF化して入稿前に確認。InDesignなどの使用が無難です。
PDF化は「印刷用」のルールを知れば簡単!
- WordやPowerPointでも入稿は可能ですが、塗り足しやフォント管理には注意が必要
- CanvaやChatGPTで作成した冊子も、事前にPDFをチェックすれば問題なし
- InDesignなど専門ツールなら安心